Contact

AI導入

中小企業のAI導入は、
何から始めるか

生成AIを使ってみたいけれど、何から手をつければいいかわからない。中小企業のAI導入は、ツール選びから入るとうまくいきません。この記事では、少ない人数の会社でも無理なく進められる順番と、最初に任せやすい業務を紹介します。

最初に決めるのは、ツールではなく業務

AI導入でいちばん多い失敗は、「とりあえずChatGPTの有料プランを契約して、全員に使ってもらう」という始め方です。使い道が決まっていないと、一部の人が少し触っただけで終わってしまいます。

先に決めるべきなのは、どの業務の、どの手間を減らしたいかです。「毎週の会議の議事録づくりに2時間かかっている」「問い合わせメールへの返信の下書きに時間を取られている」のように、具体的な作業と、かかっている時間まで書き出してみてください。ツールはそのあとで選べば十分です。

AI導入の進め方は5段階

会社の規模にかかわらず、次の順番で進めると無理がありません。

  1. 業務を洗い出す 部署ごとに、繰り返し発生する作業と、1回あたり・月あたりの時間を書き出します。完璧な一覧でなくてかまいません。
  2. 候補を2〜3個に絞る 時間がかかっていて、多少の間違いがあっても人が確認すれば済む作業を選びます。最初からお金や契約に直結する作業を選ぶのは避けます。
  3. 小さく試す 担当者1〜2人で、2〜4週間ほど実際の業務で使ってみます。ここで「どのくらい時間が減ったか」「どこで人の手直しが必要だったか」を記録しておきます。この検証をPoC(概念実証)と呼びます。
  4. 社内のルールを決める AIに入力してよい情報と、いけない情報を決めます。顧客の個人情報や取引先との契約内容などは、扱い方を先に決めておかないと後で困ります。
  5. ほかの業務・部署に広げる 効果が確認できたものから広げます。広げる段階で、社内向けの研修や、手順書があると定着しやすくなります。

最初にAIに任せやすい業務

生成AIは、文章を読む・まとめる・書くといった作業が得意です。中小企業で取り組みやすいのは、次のような業務です。

業務AIに任せる部分人が見る部分
議事録・会議メモ録音の文字起こし、要点と決定事項の整理固有名詞や数字の確認
メール・文書の作成返信や案内文、提案書の下書き内容の正しさと言い回しの最終確認
問い合わせ対応よくある質問への一次回答、内容ごとの振り分け判断が必要な問い合わせへの対応
社内の情報探し規程やマニュアルから該当する箇所を探して回答回答の根拠になった資料の確認
データの集計・転記表の整理、決まった形式への変換、集計結果の数字が合っているかの確認

社内の情報探しのように、社内の資料をもとにAIが答える仕組みはRAG(検索拡張生成)と呼ばれます。また、複数の手順がある作業をツールを使いながら最後まで進めるものはAIエージェントと呼ばれます。どちらも、まず上の表のような単純な使い方で効果を確かめてから取り組むほうが、失敗が少なくなります。

つまずきやすい4つの点

目的を決めずに全社で導入する

アカウントを配っただけでは、使う人と使わない人の差が広がるだけです。最初は対象の業務と担当者を決め、効果を数字で確認してから広げます。

入力してよい情報のルールがない

無料版や個人向けのプランでは、入力した内容がAIの学習に使われる設定になっている場合があります。業務で使うなら、学習に使われない法人向けプランや設定を前提にし、扱ってよい情報の範囲を決めておきます。

使う人の時間を取っていない

新しい道具に慣れるには、多少の時間がかかります。忙しい担当者に「空いた時間で試して」と頼むと、まず進みません。検証の期間は、試す時間を業務として確保してください。

AIの答えを確認せずに使う

生成AIは、もっともらしい間違いを書くことがあります(ハルシネーションと呼ばれます)。数字や固有名詞、法律に関わる内容は、必ず人が確認する流れにしておきます。「下書きはAI、確認と判断は人」という分担にしておけば、大きな問題にはなりにくくなります。

費用の考え方

AI導入にかかる費用は、大きく分けて次の3つです。

  • ツールの利用料 ChatGPT・Claude・Geminiなどの法人向けプランは、1人あたりの月額で料金が決まっているものが多くあります。料金は改定されることがあるので、各社の公式サイトで最新の金額を確認してください。
  • 仕組みをつくる費用 社内の資料を検索して答える仕組みや、既存のシステムとつなぐ場合は、開発の費用がかかります。
  • 社内に定着させる費用 ルールづくりや研修にかかる時間と費用です。見落とされがちですが、ここを省くと使われなくなります。

最初から大きな開発をする必要はありません。既存のツールで小さく試し、効果がはっきりしたところにだけ費用をかけるのが、中小企業には合った進め方です。IT導入補助金などの補助金が使える場合もありますが、対象や条件は年度ごとに変わるため、最新の公募要領で確認してください。

まとめ

中小企業のAI導入は、業務を洗い出し、候補を絞り、小さく試してから広げる、という順番で進めます。最初に選ぶのは、時間がかかっていて、人が確認すれば済む作業です。入力してよい情報のルールと、AIの答えを人が確認する流れは、試す段階から決めておいてください。

よくある質問

Q.01

社員が数人の会社でもAI導入の効果はありますか?

あります。人数が少ない会社ほど、ひとりが抱えている定型作業の割合が大きいため、議事録やメールの下書きなどをAIに任せるだけでも、使える時間が増えます。まずは1つの業務で試すことをおすすめします。

Q.02

AI導入は何から始めればいいですか?

ツールを選ぶ前に、繰り返し発生している業務と、それにかかっている時間を書き出します。その中から、時間がかかっていて、人が確認すれば済む作業を2〜3個選び、担当者1〜2人で2〜4週間ほど試すところから始めます。

Q.03

社内の情報をAIに入力しても大丈夫ですか?

入力した内容が学習に使われない法人向けプランや設定を使い、入力してよい情報といけない情報を社内で決めておけば、リスクを抑えて使えます。個人情報や契約内容の扱いは、試す前に決めておいてください。